
Tairaオススメ度:★★★★☆
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『屍人荘の殺人』の著者が仕掛ける
ジュブナイル×オカルト×本格ミステリ
小学校最後の夏休みが終わった。小学校卒業まであと半年。
ユースケは、自分のオカルト趣味を壁新聞作りに注ぎ込むため、“掲示係”に立候補する。この地味で面倒だと思われている掲示係の人気は低い。これで思う存分怖い話を壁新聞に書ける!……はずだったが、なぜか学級委員長をやると思われたサツキも立候補する。
優等生のサツキが掲示係を選んだ理由は、去年亡くなった従姉のマリ姉にあった。
マリ姉は一年前の奥神祭りの前日、グラウンドの真ん中で死んでいた。現場に凶器はなく、うっすらと積もった雪には第一発見者以外の足跡は残されていなかった。犯人はまだ捕まっていない。
捜査が進展しない中、サツキはマリ姉の遺品のパソコンの中に『奥郷町の七不思議』のファイルを見つける。それは一見地元に伝わる怪談話を集めたもののようだったが、どれも微妙に変更が加えられている。しかも、『七不思議』のはずなのに六つしかない。
マリ姉がわざわざ『七不思議』を残したからには、そこに意味があるはず。
そう思ったサツキは掲示係になり『七不思議』の謎を解こうとする。ユースケはオカルト好きの観点から謎を推理するが、サツキはあくまで現実的にマリ姉の意図を察しようとする。その二人の推理を聞いて、三人目の掲示係であるミナが冷静にジャッジを下す……。
死の謎は『奥郷町の七不思議』に隠されているのか? 三人の“掲示係”が挑む小学校生活最後の謎。
こんな小学6年生でありたかった、という思いを掻き立てる傑作推理長編の誕生です。
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ジュブナイルな物語ということだったので、それほど期待せずに読み始めたのですが、想像を遥かに超える完成されたミステリー展開に驚きました。
とても面白い小説でした。
街の七不思議に隠された事件の真相を、一つ一つ手繰り寄せていく展開は、手に汗握る緊張感に溢れ、まさに本格的なミステリー小説の楽しさを十分に味わうことができました。
ただ、オカルトの要素は若干のノイズになってしまっているように感じました。
オカルト要素が混ざることで、実際に仕組まれたトリックがそう見えたのか、それとも非現実的な怪異なのか、それが曖昧になってしまっているように思います。
それでも、さすが今村昌弘作品なだけあって、読み応えのあるミステリー小説でした。
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