
Tairaオススメ度:★★★★☆
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『イノセント・デイズ』を今一度書く。そして「超える」がテーマでした。
僕自身はその確信を得ています――早見和真
彼女たちは、蟻地獄の中で、必死にもがいていた。
愛媛県伊予市。越智エリカは海に面したこの街から「いつか必ず出ていきたい」と願っていた。しかしその機会が訪れようとするたび、スナックを経営する母・美智子が目の前に立ち塞がった。そして、自らも予期せず最愛の娘を授かるが──。
うだるような暑さだった八月。あの日、あの団地の一室で何が起きたのか。執着、嫉妬、怒り、焦り……。
人間の内に秘められた負の感情が一気にむき出しになっていく。強烈な愛と憎しみで結ばれた母と娘の長く狂おしい物語。ここにあるのは、かつて見たことのない絶望か、希望か──。
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「イノセント・デイズ」があまりにも衝撃的だったので、次作を読んでみました。
少し詰め込み過ぎたかなという感想です。
負の連鎖を断ち切れた人と断ち切れなかった人。
その違いは、本人の意思ということではなく、他人の関わりなのだろうか、もしそうであればこれほど理不尽なことがあるだろうかと、悲しい気持ちでいっぱいになります。
本作品では、この負の連鎖を大きなテーマとして取り扱っていると思いますが、そこに凄惨な事件が加わったことで、テーマが個々の問題に寄ってしまったような、僕はそんな印象を受けました。
とはいえ、このような重いテーマを真正面から取り扱う作者に心から敬意を表します。
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