1976
友部正人
友部正人オフィス
1990-04-25





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どうして旅に出なかったんだ

どうして旅に出なかったんだ、坊や
あんなに行きたがっていたじゃないか
どうして旅に出なかったんだ、坊や
うまく話せると思ったのかい

おまえは旅に出るよって言って出なかった
俺は昨日旅から帰ってきた奴に会ったんだ
あいつはおまえとおんなじだった
ただ違うのはあいつはまた昨日旅に出たけど
おまえは行かなかったのさ

どうして旅に出なかったんだ、坊や
あんなに行きたがっていたじゃないか
どうして旅に出なかったんだ、坊や
行っても行かなくてもおんなじだと思ったのかい

もう5年も前おまえが行きたいと思っていた場所へ
昨日あいつは出かけて行ったよ
おまえときたら昼の日中から街の銭湯で
何度も何度も自分の身体ばっかり洗っていたよ

あいつは俺に言っていたよ
さよなら またいつか会えるってさ
俺はおまえの顔を見るたびに
もうこいつには会えないんじゃないかと思うのさ

どうして旅に出なかったんだ、坊や
あんなに行きたがっていたじゃないか
どうして旅に出なかったんだ、坊や
行っても行かなくてもおんなじだと思ったのかい

おまえがちっとも旅に出ないもので
俺はもうあきあきしちゃったんだよ
おまえがあんなに言っていたことも
今俺にはみんな嘘のように聞こえるんだよ

おまえが何にも言わないものだから
この街もとうとう日が暮れちゃったよ
俺は明日旅に出るよ
あいつとはきっとどこかで会えるような気がするよ
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寝坊した頭をスッキリさせようとiTunesをシャッフル再生したところでこの曲が流れてきた。

まさに僕に向かって歌っているような、僕に問いかけているような、そんな気持ちになった。

僕は、今どこにいて、どこに向かって歩いているのか、そもそも前に進んでいるのか留まっているのか、そんなことさえわからない日々。

旅に出る準備だけで疲れてしまっていよいよこんな歳になってしまってさ。

旅に出なかったことを言い訳がましく考える人生はまっぴらだよね。

そうなる前に僕は旅に出ようと思う。

そんなことを朝から考えた6月23日の朝。

そういえば今日は慰霊の日だ。