死にたくなったら電話して
李龍徳
河出書房新社
2014-11-20



Tairaオススメ度:★★★★★

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「死にたくなったら電話して下さい。いつでも。」
空っぽな日々を送る浪人生・徳山は、ある日バイトの同僚に連れられて十三のキャバクラを訪れる。
そこで出会ったナンバーワンキャバ嬢・初美から、携帯番号と謎のメッセージを渡され、猛烈なアプローチを怪しむも、気がつけば、他のことは何もかもどうでもいいほど彼女の虜に。
殺人・残酷・猟奇・拷問・残虐……
初美が膨大な知識量と記憶力で恍惚と語る「世界の残虐史」を聞きながらの異様なセックスに溺れた徳山は、やがて厭世的な彼女の思考に浸食され、次々と外部との関係を切断していき――。
ひとりの男が、死神のような女から無意識に引き出される、破滅への欲望。
全選考委員が絶賛した圧倒的な筆力で、文学と人類に激震をもたらす、現代の「心中もの」登場!
第51回文藝賞受賞作。
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上記の紹介文と僕の感想は少し違う。

かと言って上手く説明できるほどの文才がないのがもどかしいところ。

それでも何とか表現するとすれば、僕が思うのはこの小説は純愛であるということ。

容姿が整っている二人が互いに惹かれ合い、そして美しいままに生を終える。

例えばこの物語にこんな言葉があった。
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いったん寝てしまえばもう、誰も恨まず誰も妬まず、何も恐れず何も嫌悪せず、何ものからも、おびやかされない。落ち込むことも、落ち込まれることもない。
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そうやって愛し愛される状態で死を迎える。

そこには悪意も駆け引きも破滅もなく、ただただ二人だけの世界がある。

それが正しいとか間違っているとか、そういう客観的な基準ではなく、一つの純愛の形ではないかと僕は考える。

こんな言葉があった。
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彼女も老い、僕も老いる。または老いてしまう前にも人間には必ず飽きが来る。欠点が見え、その欠点がだんだんと許せなくなり、セックスのパターンにうんざりし、トイレの音にがっかりし、新鮮味が涸れる。老廃物ばかりが溜まる生活。ごまかしの愛。ごまかすための言葉・・・
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愛とはそういうものだと受け入れるのか割り切るのか、それは正しい考えなのか。

お互いを純粋に想うままに死を迎えることは、やはり一つの愛の形ではないかと僕は思う。