
著者:百田尚樹
販売元:太田出版
発売日:2008-06-19
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Tairaオススメ度:★★★★
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高校ボクシング部を舞台に、天才的ボクシングセンスの鏑矢、進学コースの秀才・木樽という二人の少年を軸に交錯する友情、闘い、挫折、そして栄光。
二人を見守る英語教師・耀子、立ちはだかるライバルたち…様々な経験を経て二人が掴み取ったものは!?
『永遠の0』で全国の読者を感涙の渦に巻き込んだ百田尚樹が移ろいやすい少年たちの心の成長を感動的に描き出す傑作青春小説。
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たまにはミステリー以外も読んでみようと思い手に取ってみたのがこの本です。
青春小説というジャンルは、これまであまり読んだことがなかったのでとても新鮮な感覚でした。
青春という誰もが経験するであろうほろ苦くも甘酸っぱい人生の葛藤が飾り気なく描かれていて、とても心打つものがありました。
とても面白く読むことができました。
この小説は、天才的な運動センスをもつ鏑矢と、頭脳明晰だが運動オンチの木樽という二人の人物を軸に物語が描かれていきます。
物語は、高津という女性教師が、電車の中でタバコを吸う不良達を注意をするが逆にからまれてしまいそうになったところを、鏑矢が風のようにあらわれ一瞬のうちに不良達を倒してしまう、そんな場面から始まっていきます。
その場には木樽も一緒にいて、木樽はこの女性教師に密かに憧れの思いを寄せていたのですが、木樽自信が不良達を注意する勇気を持っている訳もなく、鏑矢の勇気にただ感心するだけで終わってしまいます。
そんな木樽が、ひょんなことから女子生徒と買い物に出かけた先で中学生時代のいじめっ子達いわゆる不良に出会い、女子生徒の前で暴力を振るわれてしまいますが、されるがままで反撃できない自分自身を心から悔やみ、ケンカが強くなりたいという理由で、鏑矢が所属するボクシング部の門を叩きます。
憧れの女性が目の前で不良達にからまれても怖くて何もできない、女子生徒の前で暴力を振るわれてもされるがまま、そういう自分を打破すべくボクシングを習い始めるという、カッコ悪くも素直な理由はとても共感が持てました。
そして自分自身の弱さを認めた木樽が一生懸命練習を重ねることで、少しずつ少しずつボクシングのテクニックを身につけていく様は、読んでいて胸が熱くなるものがありました。
物語は特に奇をてらった展開もなく、逆に言えば最初から予想できる展開で進行していきます。
運動神経抜群でボクシングの才能にあふれた鏑矢の栄光そして挫折、木樽の成長そして開花、立ちはだかる最強のライバル、そして運命の決戦。
この大筋を幹に、木樽が女性教師に振り向いてもらいたくて努力する様や、女性教師が奔放な鏑矢に引かれる感情等々、複雑な思いの交錯が描かれています。
読んでいる方は、時に喜び、時に歯がゆく、時に心を揺さぶられてしまいます。
とても面白い小説でした。
僕自身も、もう一度何かに一生懸命トライしてみたいと心から思わされました。
今回は星4つです。
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