
著者:道尾 秀介
販売元:東京創元社
発売日:2006-09-30
おすすめ度:

クチコミを見る
Tairaオススメ度:★★★
----------
人間は、死んだらどうなるの?―いなくなるのよ―いなくなって、どうなるの?―いなくなって、それだけなの―。
その会話から三年後、鳳介の母はこの世を去った。
父の洋一郎と二人だけの暮らしが始まって数日後、幼馴染みの亜紀の母親が自殺を遂げる。
夫の職場である医科大学の研究棟の屋上から飛び降りたのだ。
そして亜紀が交通事故に遭い、洋一郎までもが…。
父とのささやかな幸せを願う小学五年生の少年が、苦悩の果てに辿り着いた驚愕の真実とは?
話題作『向日葵の咲かない夏』の俊英が新たに放つ巧緻な傑作。
----------
道尾秀介の作品を読んだのは今回で三冊目です。
三冊を通して感じる点が、中盤から後半にかけての尻すぼまり感です。
どの小悦も、前半にこれでもかとミステリー要素が配されるので、前半から中盤にかけてはテンポ良く疾走感に溢れ、とても読み応えがあるのですが、後半に入ると、ふんだんに配したミステリー要素が逆に仇となり、一つ一つのミステリー要素に深みがもたらされることなく、しかも全ての要素が回収されないため、結果として物語のテーマすらもぼやけてしまい読後感に物足りなさだけが残ってしまう、そんな感を受けました。
今回の「シャドウ」は、特にそう感じました。
主人公の家族に過去何がおこったのか、という物語のキーとなるプロットを丁寧に描いていくだけでもとても面白くなったであろう展開に、不必要なくらいその他諸々の要素を加えてしまったことで、結果として大筋すらも破綻してしまっているように思いました。
しかも、ミステリー的な伏線の回収は、物語を引き立てるあくまでも手段としての扱いでなければならないはずなのに、この小説は、伏線の回収自体が手段ではなく目的になっているように思います。
なので、意外性に乏しい伏線が、さも大げさに回収されることがしばしばあり、少々困惑してしまいます。
文章自体は読みやすく、章と章で主人公とその父親の視点をかえ、少しずつ物語の核心に近づいていく展開はとても面白かっただけに、もう一工夫あればより良くなったのではないかと思います。
なので今回は星3つでした。
コメント