食堂かたつむり食堂かたつむり
著者:小川 糸
販売元:ポプラ社
発売日:2008-01
おすすめ度:3.0
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Tairaオススメ度:★★★

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衝撃的な失恋のあと、倫子は故郷に戻り実家の離れで食堂を始める。
ある噂とともに店は評判になるが。
失ったもの:恋、家財道具一式、声。 残ったもの:ぬか床。
ふるさとに戻り、メニューのない食堂をはじめた倫子。
お客は一日一組だけ。
そこでの出会いが、徐々にすべてを変えていく。
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肩の力を抜いた小説が読みたいなと思い手に取ったのがこの本。

先日読んだサウス・バウンドと同様に、家族や周りの人との愛を押し付けがましくならないように丁寧に描いた優しい物語でした。

僕的に好感が持てたのは、物語の冒頭で失恋の話が出てきますが、それ以降は人としての愛というテーマからぶれることなく、寓話的な話がきれいに整理されて進められているところです。

全体として一つの大きな物語というよりも、小さな話が複数集まって一つの物語を形成しているような、とても読み易い小説でした。

ただ、作者の料理に対する愛情が少々過度に表現されているようにも思えます。
男性の僕としては、物語と直接関係のないレシピの説明や食材の紹介は今一つ興味がわかず、結果として物語に入り込んでいたところを一旦中断させられる形になり、この部分は果たして必要なんだろうかとさえ思ってしまいます。

それと、物語の所々で突然”性”を意識する言葉が出てきますが、これも物語として必要なのだろうかと疑問に感じます。

あまりいろいろな情報は詰めずに、もう少し寓話的な物語に深みをもたした方がもっともっと素敵な小説になったのではないかと思います。

ほのぼのとした気分に浸るにはちょうど良い本でした。