双頭の悪魔 (創元推理文庫)


Tairaオススメ度:★★★

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四国山中に孤立する芸術家の村へ行ったまま戻らないマリア。
英都大学推理研の一行は大雨のなか村への潜入を図るが、ほどなく橋が濁流に呑まれて交通が途絶。
川の両側に分断された江神・マリアと、望月・織田・アリス――
双方が殺人事件に巻き込まれ、各各の真相究明が始まる。読者への挑戦が三度添えられた、犯人当ての限界に挑む大作。
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以前読んだ”孤島パズル”の続編にあたるこの本。
続編と言っても物語が続いている訳ではなくて登場人物が前作と同じという設定。
なので前作を読んでいなくても楽しめる内容だとは思いますが、前作を読んでいる僕には、凄く拍子抜けした内容に感じました。

その一番の原因が、主人公の一人であるマリアの心理描写が少々くどいところにあるのではないかと僕的には思います。
前作のマリアは、快活でユーモラスでとても好感の持てる女子大生という設定だったはずなのに、今回のマリアは前作の事件を引きずっているとはいえ、あまりにも内向的で遠慮がちで上品すぎる立ち居振る舞いと、今一つイメージしにくいキャラクター設定になっていました。
それならあえてマリアでなくても良かったのではないかとさえ思ってしまいます。

また、ストーリーのクライマックス、謎解きについても今一つスッキリしません。
一言で言うと謎解きの説明が少々遠回しすぎるように思います。
説明がカッコつけ過ぎているというか、いちいち言い回しが丁寧すぎるとか、登場人物は大学生という設定なのに、そういった若さ溢れる爽快な提示は一切なく、読んでいて少々肩が凝ってしまいます。

また、この物語はかなりの長編になっているのですが、物語の前半部分に敷かれたいくつかの伏線が全て回収されていないようにも思います。
これだけの文章量なので、それらを丁寧に理由づけして回収してほしかったと思います。
ラストが結構ドタバタですね。

とか偉そうなことを長々と書いてみましたが、それでもこれだけの長編を、アリス編、マリア編と絶妙なタイミングで繋げていく物語構成は僕の心をグッとつかんで放さず、気づけばあっという間に読み切ってしまいました。

読んでいる間は次の展開が早く知りたくてワクワクウキウキしていたのですが、読み終わった後はなんだかスッキリとしていない。そんな小説でした。

という訳で星3つです。