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「家には帰れそうかい?」
と、ばあちゃんは言った。ばあちゃんが前後の脈絡がわからないことを聞いてくるのはいつものことなので、多田は無難に、
「はい、これから帰るところです」
と答えた。
「だったらいいけれど」
ばあじゃんは皺だらけの口もとを動かす。「あんまり長く旅をつづけてると、帰る場所がわからなくなるからね」
そういえば年末に会ったときも、旅がどうこうと言っていたな、と多田は思い出した。
「旅行なんて、もう何年もしてませんよ。俺はずっとまほろにいます」
「そうかい?私には、あんたの声がすごく遠い場所から聞こえてくるような気がするけど」
それは、ばあちゃんの耳が遠いからだ。多田は少し笑った。多田が笑ったことには気づかず、ばあちゃんは重そうにまぶたをしばたたかせて言った。
「適当なところで引き返したほうがいい」
「引き返さなかったら、どうなりますか?」
「迷子になる」
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今読んでいる本にこんな会話が出てきた。

とても心に響いた。

僕にとって何が大切か。そろそろ真剣に考えないといけないなと思う。