Tairaオススメ度:★★★★☆
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悪魔のように悪賢く、美しい男妾あがりのヤクザ…
それが、十年振りに麻生の前に現れた山内の姿だった。
十年前の気弱なインテリ青年はどこに消えたのか。
この十年の間に何が起こったのだ?
新宿を牛耳る大暴力団の幹部・韮崎誠一惨殺事件を捜査する麻生は、次第に過去に追い詰められ、因縁の波に翻弄されて暗い闇へとおちていく…。
愛と宿命に操られた者たちの果てしなく長い夜。
人間の原罪を問うて、深い感動を呼ぶ傑作。
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とてもボリュームがある作品だった。
ボリュームがある作品は、読み始めるまでに若干躊躇してしまうけれど、読み進めると、深く描きこまれた世界観や複雑に入り組んだ登場人物たちの感情の揺れなどが精緻に語られるので、読み終えた後の満足感はひとしおだ。
この作品も、人の欲望や憎愛がこれでもかと描かれていて、しかも、性を超えた暴力やセックスが遠慮なく描かれているので、読んでいてクラクラしてくるというか、物語の迫力に圧倒されっぱなしだった。
描かれている内容は決して倫理的でも正しいことでもないけれども、人間としての本能に正直に生きる登場人物に少なからずの羨望を感じなくもない。そんな不謹慎な感想を持ったことも事実。
なんとなく人生を生きる僕と、刹那的な人生を生きる彼ら。どちらが人間的だろうか。
とても興味深く面白い作品だった。
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