絶望ノート絶望ノート
著者:歌野 晶午
販売元:幻冬舎
発売日:2009-05
おすすめ度:3.5
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Tairaオススメ度:★★★★

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いじめに遭っている中学2年の太刀川照音は、その苦しみ、両親への不満を「絶望ノート」と名づけた日記帳に書き連ねていた。
そんな彼はある日、校庭で人間の頭部大の石を見つけて持ち帰り、それを自分にとっての“神”だと信じた。
神の名はオイネプギプト。
エスカレートするいじめに耐えきれず、彼は自らの血をもって祈りを捧げ、いじめグループ中心人物の殺人を神に依頼した。
「オイネプギプト様、是永雄一郎を殺してください」
―はたして是永はあっけなく死んだ。
しかし、いじめはなお収まらない。
照音は次々に名前を日記帳に書きつけ神に祈り、そして級友は死んでいった。
不審に思った警察は両親と照音本人を取り調べるが、さらに殺人は続く―。
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なかなか読み応えのある物語でした。
面白い小説だと思います。

"いじめ"という重く深いテーマを取り扱いながらも、物語は主に日記形式の散文で語られているため文体が軽く、それ故、今一つ悲愴感に乏しいなという印象を、僕は当初もっていました。

しかしそれ自体が物語の最後の展開の布石と考えるに至り、愕然となりました。

確かに、主人公の心象は全て日記形式で語られているのに対し、その他の人物の心象は一般的な一人称で語られていました。

物語を読み終え、なるほどなと唸る僕でした。

言い訳ではないですが、僕も何度か「あれ?」と思うことはあったのです。
ですが作者の自然かつ計算された物語構成に簡単に誘導され、結局「あれ?」と思った個所は、僕の考え過ぎだろうと読み進めてしまいました。

ただし、物語に一貫して登場するジョン・レノンと登場人物達の関連性が、もう少し強いか弱いかのどちらかであってほしかったと思います。
ジョン・レノンという強烈なアイコンを登場させた以上、もう少し魅力あるエピソードが欲しかったと個人的に思いました。

面白い小説でした。

これぞミステリー小説の醍醐味であり、やはりミステリー小説は面白いと改めて思いました。

今回は星4つです。