特別法第001条DUST特別法第001条DUST
著者:山田 悠介
販売元:文芸社
発売日:2006-12
おすすめ度:3.0
クチコミを見る


Tairaオススメ度:★

----------
食料もなく、ただ廃墟と荒野が広がるだけの孤島。
敵からの襲撃、飢餓の中で、彼らがつむいだ唯一の光とは?
「流罪」の復活、刑期は500日。
棄民の島で、生死を賭けたサバイバルが、今はじまる。
----------

働かず税金を納めない人達を無人島に500日間閉じ込める。
そこでは法が適用されないため何をしても自由。
死のうが生きようが国は関与しない。
無人島内には、主人公を含めた男5人と女1人のグループと、その他の複数のグループが存在している。

物語はそんな設定で始まります。

設定だけをみると、高見広春作のバトル・ロワイアルや桐野夏生作の東京島を思い起こさせますが、実際にはそれらの作品には遠く及ばないリアリティの低さやストーリーテリングの乏しさに、ただただがっかりです。

例えば、男5人と女1人であれば、男女関係を巡る争いが起こることは必然であり、しかも女性は美しいという設定なのでなおさらだと考えるし、無人島内の食料が限られたものとなると、それらを巡る争いはもっと熾烈を極めたものになると思います。

しかし物語では、主人公が何の脈絡もなく、拳銃を手に入れたり、女性から好意を寄せられたり、いつの間にか子供ができてたり、他のグループとの抗争が頻繁に行われているかと思ったら、終盤はそんな展開が一切無くなったり、空腹が我慢できず死体を食べるという生死の際に立たされた主人公のぎりぎりの様子が描かれたかと思ったら、温和で友好的な設定で描かれている人物が普通に生き延びていたり。

物語の全ての展開が、行き当たりばったりで中途半端な感は否めず、しかも無人島生活を終了してからの物語展開は全くもって意味不明で、この本が何をテーマとしていて何を描きたいのか、僕には全く理解できませんでした。

歪んだ国家、無人島生活において極限状態に陥った人間の食欲と性欲、そして愛と友情、国家への挑戦、等々、面白そうなテーマを全て取り入れた結果、全ての要素の面白さを半減させるどころか表面をなぞっただけで力尽きた、僕はそう感じました。

今回は星1つです。