絶叫城殺人事件 (新潮エンターテインメント倶楽部SS)絶叫城殺人事件 (新潮エンターテインメント倶楽部SS)
著者:有栖川 有栖
販売元:新潮社
発売日:2001-10
おすすめ度:4.5
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Tairaオススメ度:★★

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黒鳥亭、それがすべての始まりだった。
壷中庵、月宮殿、雪華楼、紅雨荘…。
殺人事件の現場はそれぞれ、独特のアウラを放つ館であった。
臨床犯罪学者・火村英生と作家・有栖川有栖のふたりが突きとめた、真相とは。
そして、大都市を恐怖で覆い尽くした、猟奇的な連続殺人!影なき殺人鬼=ナイト・プローラーは、あの“絶叫城”の住人なのか!?
本格推理小説の旗手が、存分に腕を振るった、傑作短編集。
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本格推理小説の短編集、僕としては物足りなさだけが残る読後感でした。

やはり本格的な推理小説は長編であるがこその面白さがある訳で、推理小説に不可欠な登場人物達の微妙な関係性や物語の舞台の情景描写等々がかなり省略された短編となると、面白みが半減どころか推理小説としての体をなしていないのではないかとさえ思ってしまいます。

事件が起こり、ひょんなことから犯行現場に居合わせた探偵よろしくの主人公が、いろいろな人から話を聞いたり犯行現場を何度か見ることで、ババンと犯人と犯行トリックを言い当てる。

推理小説は簡単に言うと全てこの構図です。

そこに肉付けを行っていくからこそ物語に深みがもたらされるのであって、時間をかけて描かれた様々な情景や会話の中に伏線がそれとなく引かれ、クライマックスでそれらが丁寧に回収されることこそが本格推理小説の醍醐味であると僕は思っています。

僕の中でこういう前提があり、その上で今回この本を手にしてしまったので、冒頭の感想となった訳です。

全編が、あまりにもあっさりと物語が展開していくので、物語に引き込まれる前に、読者に推理を楽しませる前に、解決編が提示されていきます。

文章が有栖川有栖作独特の隙がない推理小説然りとした文章であるだけに、それぞれの編をもっと深く読み込みたいという欲求に駆られます。

そういう意味でも、物足りなさをとても感じてしまいました。

今回は星2つです。