レフトハンドレフトハンド
著者:中井 拓志
販売元:角川書店
発売日:1997-06
おすすめ度:3.0
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Tairaオススメ度:★

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製薬会社テルンジャパンの埼玉県研究所・三号研究棟で、ウィルス漏洩事故が発生した。
漏れだしたのは通称レフトハンド・ウィルス、LHVと呼ばれる禅く未知のウィルスで、致死率は100%。
しかし、この三号棟がなぜこのウィルスを扱っていたのかなど、確かなことはなにひとつわからない。
漏洩事故の直後、主任をつとめていた研究者・影山智博が三号棟を乗っ取った。
彼は研究活動の続行を要請、要求が受け入れられなければウィルスを外へ垂れ流すと脅かす。
研究所側は脅迫に屈し、一般市民二人を実験台として三号棟へ送りこむが…。
第4回日本ホラー小説大賞長編賞受賞作。
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上記の紹介文を読むと、とても興味をそそりますが、実際に読んでみての僕の正直な感想は「面白くなかった」です。

とある研究施設で発生したバイオハザード。
人間がウイルスに感染すると、左腕が大きく膨れ上がり、次第に固い膜を形成し、最終的には固い膜から脱皮した左腕が、人間の心臓を引き抜きながら分離し、独立した生命体として活動を開始する。
しかもこの左腕の形をした生物は、原始的な生命体でありながらも、視覚や聴覚、養分を吸収するための器官を備えていて、時には人間に襲いかかる。

物語の冒頭では、他の生命体となった左腕のおぞましさが綿々と描かれていて、おどろおどろしい左腕と人間が今後どのように対決していくのかと、かなり期待をもって読み進めていたのですが、実際には、左腕と人間との対決はほとんど描かれておらず、物語の大部分は、ウイルスの起源についてだらだらと描かれているだけでした。心からがっかりです。

しかも、物語の大部分を使って、このウイルスは地球上で無脊椎動物が誕生したカンブリア紀に淘汰された生命体情報(DNA)が、何らかの形で現代に蘇ったものなんだと大演説していたところを、物語の最後の最後で実はそうではなかったと展開されても、どんでん返し的な爽快さは微塵も感じることはできず、むしろこれまで苦労して読み進めてきたあの解説は一体何だったのかと腹立ちさえ感じざるを得ませんでした。

左腕の存在自体も、人間の心臓を引き抜きながら他の生命として活動するという点では斬新な発想だと思いますが、その描写が今ひとつリアリティに欠けていて今一つ具体的にイメージすることができませんでした。

更に、物語ではウイルスに感染した人の左腕が抜け落ちるまでをやたらとダラダラと描くだけで、その恐怖の対象となった左腕自体の存在がほとんど描かれていないので、結果として恐怖心が持続することもなく、読み進めれば読み進める程、興味もかなり薄れていってしまいました。

物語の舞台は、研究施設のビル1棟という閉鎖的な環境。しかもその周りは自衛隊が厳重に包囲している。
バイオハザード小説にありがちな、やたらとスケールが大きくなりすぎて物語が破綻しがちな設定ではないので、物語の余計な解説部分をカットしてもっとシャープに編集し直したら、意外と面白い小説になるのではないかなと思うだけに、残念な内容でした。

今僕の手元に日本ホラー小説大賞受賞作が後2冊ありますが、今回の小説を読み、この賞自体に一抹の不安を感じてしまっています。

今回は星1つでした。