
著者:近藤 史恵
販売元:新潮社
発売日:2007-08
おすすめ度:

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Tairaオススメ度:★★★★
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ただ、あの人を勝たせるために走る。それが、僕のすべてだ。
勝つことを義務づけられた〈エース〉と、それをサポートする〈アシスト〉が、冷酷に分担された世界、自転車ロードレース。
初めて抜擢された海外遠征で、僕は思いも寄らない悲劇に遭遇する。
それは、単なる事故のはずだった――。
二転三転する〈真相〉、リフレインの度に重きを増すテーマ、押し寄せる感動! 青春ミステリの逸品。
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今回手に取ったのは青春小説のこの本、その名もサクリファイス。
自転車好きの僕としてはいつかは読みたいと思っていた小説でした。
その理由は自転車のロードレースを取り扱っているから。
僕は自転車に乗るのが好きってだけで、特にロードレース自体に明るい訳ではないのですが、そんな僕でもロードレースをテーマにしたストーリー展開を素直に楽しむことができました。
それに、僕はこの本を読むまで、ロードレースは個人競技だとずっと思っていたので、こんなに緻密なチーム戦略に基づく団体競技だということを初めて知り、とても興味深く読み進めることができました。
物語は、ロードレースチームのエースをサポートするアシストの視点から語られていきます。
エースはエースとしての勝利とチームとしての勝利の重責を担いレースに臨み、アシストはエースに勝利をもたらすためにひいてはチームを勝利に導くためにレースに臨みます。
その完全な実力世界から生まれる人間関係の軋轢や葛藤がスピード感をもって描かれていきます。
物語は間延びすることなく、ミステリー的な要素をちりばめながらテンポ良く小気味良く展開されていて、冒頭からクライマックスを経てエピローグに至るまで、全く飽きることなく読み進めることができました。
ただ一つ、個人的に気になる点が、主人公の元彼女の描かれ方です。
必要以上に元彼女が美人であることが強調されていて、美人であるから主人公は過去を引きずっているのかと思わざるをえないというか何と言うか。
また、その元彼女が現在つきあっている恋人は、主人公が所属するチームの元次期エースだったという設定ですが、元彼女と元次期エースだった人がつき合うというあまり現実的でない点が、その後特に物語に意味を持たす訳ではなくて、それならあえて物語の世界観を狭めるようなことはしなければ良いのにと、少し残念に思いました。
物語の柱となっているロードレースチームの展開だけでもとても面白いだけに、恋愛的な要素は徹底的に排しても良かったのではないかと思います。
と言いつつも面白い小説であったことは間違いありません。
今回は星4つでした。
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