少女 (ハヤカワ・ミステリワールド)少女 (ハヤカワ・ミステリワールド)
著者:湊 かなえ
販売元:早川書房
発売日:2009-01-23
おすすめ度:3.0
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Tairaオススメ度:★★★

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内容紹介
高2の夏休み前、由紀と敦子は転入生の紫織から衝撃的な話を聞く。
彼女はかつて親友の自殺を目にしたというのだ。
その告白に魅せられた二人の胸にある思いが浮かぶ――「人が死ぬ瞬間を見たい」。
由紀は病院へボランティアに行き、重病の少年の死を、敦子は老人ホームで手伝いをし、入居者の死を目撃しようとする。
少女たちの無垢な好奇心から始まった夏が、複雑な因果の果てにむかえた衝撃の結末とは?

著者について
1973年広島県生まれ。
武庫川女子大学家政学部卒。
第2回BS-i新人脚本賞佳作入選(2005)、第35回創作ラジオドラマ大賞受賞(2007)。
2007年「聖職者」で第29回小説推理新人賞を受賞。
2008年、同作を第1章とした全6章構成の『告白』がベストセラーとなる。
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以前読んだ「告白」が面白かったので、この作者の他の作品はどうだろうかと手に取ったのがこの本でした。

面白い小説であるとは思いましたが、いくつか疑問に感じる点もちらほらと。

物語は、二人の女子高生の視点を交互に描くことで話が進められていきます。
一人は感情をあまり表には出さないクールなタイプ、一人は周りの目ばかりを気にするタイプ。
互いに互いを友人とは思っているが、若干、気持ちにズレが生じている。
そんな中、転入生から聞いた「人の死」の話に興味を持った二人が、夏休みを利用して、それぞれが人の死に出会えそうな病院や老人ホームに行くことで意外なドラマが生まれていく。

簡単にまとめるとこういう話になりますが、僕が違和感を感じた点が、二人が全く別の場所で「人の死」を体験しようとしているにも関わらず、やたらと二人の話が繋がるということです。
例えば、一人の主人公が病院で出会った難病の少年の父親が、もう一人の主人公が手伝いをすることになった老人ホームの従業員であったり、老人ホームに入所するおばあさんはもう一人の主人公の実の祖母だったり等々。
これでもかこれでもかっていうくらい、いろいろな話が繋がっていきます。正直やり過ぎです。
いくつかの話が繋がる分については、読んでいる方もある程度は現実味を持って共感できますが、ここまで度を超して話が繋がると、到底現実にはあり得ないととして物語から気持ちが離れてしまいます。

また、これらの話の繋がりが、現実にはあり得ないにしても物語のスパイスとして意外性を持って繋がっていけばミステリー小説としてかなり完成度が高い作品になったと思いますが、明らかにこの部分とこの部分は繋がるぞと言わんばかりに伏線として配されているので、興醒めというか残念というか。

話と話を繋げるという点に固執してしまったため、結果として物語のテーマさえもぼんやりしてしまっているように僕は感じました。

ここまでトリック仕立てにせず、一つ一つの物語をもっと作り込み盛り上げていった方が、より厚みと深さを持った話になったのではないかと思います。

今回は星3つでした。