鼻 (角川ホラー文庫)鼻 (角川ホラー文庫)
著者:曽根 圭介
販売元:角川書店
発売日:2007-11
おすすめ度:4.5
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Tairaオススメ度:★★★

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人間たちは、テングとブタに二分されている。
鼻を持つテングはブタに迫害され、殺され続けている。
外科医の「私」は、テングたちを救うべく、違法とされるブタへの転換手術を決意する。
一方、自己臭症に悩む刑事の「俺」は、二人の少女の行方不明事件を捜査している。
そのさなか、因縁の男と再会することになるが…。
日本ホラー小説大賞短編賞受賞作「鼻」他二編を収録。
大型新人の才気が迸る傑作短編集。

著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
曽根 圭介
1967年静岡県生まれ。
91年、早稲田大学商学部中退。
サウナ従業員、漫画喫茶店長を経て、その後無職に。
2007年、「鼻」にて第14回日本ホラー小説大賞短編賞を受賞。
直後、「沈底魚」にて第五十三回江戸川乱歩賞を受賞。
日本ホラー小説大賞短編賞と江戸川乱歩賞のダブル受賞は史上初の快挙。
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今回手に取ったのは、以前読んだ「沈底魚」の作者が書いた、第14回日本ホラー小説大賞短編賞受賞作のこの本です。

この本は、「暴落」「受難」「鼻」という三篇から構成されていて、それぞれの物語のテーマは異なりますが、全体を通して良い感じにおどろおどろしさが統一されていて、とても面白く読み進めることができました。

この中の「鼻」というタイトルが日本ホラー小説大賞短編賞を受賞しているようですが、僕としては「鼻」よりも「暴落」の方がコンパクトにまとまっていて面白いと感じました。

「暴落」は個人個人の価値を株価で図る社会という、非現実的なんだけどあり得そうな社会が舞台として描かれています。
その社会では、個人の学歴や職業、個人の行動はもちろん家族や友人の行動全てが株価として随時反映されていきます。
こう書くと現実の社会と大差ないようにも思えてくるから不思議ですね。

物語では、日に日に株価が落ちていく主人公の救いようのない顛末が淡々と描かれています。
奇をてらった展開こそありませんが、現代社会の怖さを静かに突きつけられたような怖さを感じることができました。

肝心の「鼻」については、簡単に言うと、分かりにくい物語でした。

作者としては大どんでん返し的なエンディングに仕上げたつもりだと思いますが、僕としてはこの展開が全く理解できませんでした。
僕的には、このどんでん返しが物語を仕上げる手段ではなく、どんでん返しそのものが目的になってしまったような、あまりにも強引な展開に感じてしまいました。

エンディングまでの流れがとても面白かっただけに心から残念でした。

それでもこの小説は面白かったと思います。
「沈底魚」がとても説明じみた辛気な作品だったけに予想以上に楽しめました。

今回は星3つです。