水の時計水の時計
著者:初野 晴
販売元:角川書店
発売日:2002-05
おすすめ度:3.5
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Tairaオススメ度:★★★

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医学的には脳死と診断されながら、月明かりの夜に限り、特殊な装置を使って言葉を話すことのできる少女・葉月。
生きることも死ぬこともできない、残酷すぎる運命に囚われた葉月が望んだのは、自らの臓器を、移植を必要としている人々に分け与えることだった―。
透明感あふれる筆致で生と死の狭間を描いた、ファンタジックな寓話ミステリ。
第22回横溝正史ミステリ大賞受賞作。
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臓器移植関連法案が大きく動いたここ数日ですが、それについてのコメントは控えつつ、臓器移植を扱った小説を読んでみようと思い手に取ったのがこの本でした。

全体として物悲しい物語でした。

上記の解説にあるように、脳死と判定されているにも関わらず月明かりの夜にだけ言葉を発することができる葉月という少女。
完全なフィクションとしての設定だからこそ、現実にはあり得ない、またあってはならないあまりにも寂しい物語となっています。

自分の臓器を差し出すことを望みつつも、月明かりの夜に臓器を提供したことを受け入れなければならないという気持ちはいったいどういう気持ちなのだろうか。
それが他人にとっては幸せな結果になるとしても。

物語は、葉月という少女と彼女の臓器を運ぶという辛い役目を背負う昴という少年によって描かれていきます。
臓器を提供する側とされる側のエピソードがいくつか語られることで、物語により悲しみが増していきます。
結果として、この二人を通して、生きるということを強烈かつ暴力的に意識させられたように思います。

静かに淡々と読み進めることができる物語でしたが、最後の章で、これまでの章にちりばめられていた伏線を無理矢理回収しようとした感があり、少々残念な読後感になってしまいました。

謎解きのミステリーとして仕上げずに、最後まで寓話的に語っていた方が僕としては良かったのではないかと思います。