模倣犯〈上〉模倣犯〈上〉
著者:宮部 みゆき
販売元:小学館
発売日:2001-03
おすすめ度:4.0
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模倣犯〈下〉模倣犯〈下〉
著者:宮部 みゆき
販売元:小学館
発売日:2001-03
おすすめ度:3.5
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Tairaオススメ度:★★★★

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公園のゴミ箱から発見された女性の右腕、それは史上最悪の犯罪者によって仕組まれた連続女性殺人事件のプロローグだった。
比類なき知能犯に挑む、第一発見者の少年と、孫娘を殺された老人。
そして被害者宅やテレビの生放送に向け、不適な挑発を続ける犯人――。
が、やがて事態は急転直下、交通事故死した男の自宅から、「殺人の記録」が発見される、事件は解決するかに見えたが、そこに、一連の凶行の真相を大胆に予想する人物が現れる。
死んだ男の正体は? 少年と老人が辿り着いた意外な結末とは? 宮部みゆきが“犯罪の世紀”に放つ、渾身の最長編現代ミステリ。
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約3週間をかけてようやくこの本を読み終えました。

とにかくもの凄い文章量でした。
物語では、これでもかこれでもかと様々なエピソードがふんだんに語られています。
しかし、この文章量ははたして必要なのか。と考えると、僕としてはここまで物語を厚くする必要はなかったのではないかと思います。

勿論、現実に何らかの事件が起こった場合、被害者と加害者という単純な人物設定だけで物事が語られる訳ではないということは理解していますし、この本のように、事件にはいろいろな人がいろいろな点で関わり合うとともにワイドショー的な派手な面とそうでない側面があるということも分かっているつもりです。

ただ僕としては、この本はあくまでも作り物であり、実際に現実的でない物語展開等も多々あるため、文章量が多くなればなるほど、フィクション的な要素を逆に目立たせてしまい、物語を若干陳腐にしてしまっているように感じました。

主犯の人物設定も、フィクションとして徹底的な頭脳犯として描くのか現実にいるような人間として描くのか、この辺りも中途半端な設定になっているように思います。
実際、物語の後半では、主犯が突然人間的に描かれるようになり、これまでの人物像との違いに少々違和感を覚えます。

また人物設定に限らず、後半のくだりは、物語の疾走感や精緻さもだんだんと尻窄みになっていると感じます。
これまで徹底して語られてきたいくつかの物語が、語り尽くされないまま終わっているような、そんな中途半端な読後感を僕は感じました。
ここまできたのならもっと徹底して語り尽くしてほしかったと思います。

と批判的なことを長々と書いてみましたが、この文章量をサラサラと読ませる物語の構成や展開はとても面白かったと思います。
宮部みゆきってだけで僕としてはどうしても高いハードルを設定しがちなので、そういったことを抜きに読んでいたら5点満点だったかもって思いますね。
なので今回は4点ということで。

そうそう、先日観た模倣犯の映画版、この本を読み終えて改めて思い直したことがあります。
あの映画は面白くないというレベルを遥かに下回る駄作だったということです。
本当に驚きです。
この圧倒的な物語をどうやったらあそこまで徹底的に陳腐にできるのか。
犯人バージョン、被害者バージョン、マスコミバージョンと物語をいくつかに分けて、それぞれの映画を作った方がいろいろな意味で良かったのではないかと思います。