秋の牢獄秋の牢獄
著者:恒川 光太郎
販売元:角川書店
発売日:2007-11
おすすめ度:4.5
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Tairaオススメ度:★★★★

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十一月七日、水曜日。
女子大生の藍(あい)は、秋のその一日を、何度も繰り返している。
毎日同じ講義、毎日同じ会話をする友人。
朝になれば全てがリセットされ、再び十一月七日が始まる。
彼女は何のために十一月七日を繰り返しているのか。
この繰り返しの日々に終わりは訪れるのだろうか――。
まるで童話のようなモチーフと、透明感あふれる精緻な文体。
心地良さに導かれて読み進んでいくと、思いもかけない物語の激流に巻き込まれ、気付いた時には一人取り残されている――。
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先日読んだ「夜市 - 恒川 光太郎」がとても印象に残ったので、今回手に取ったのも恒川光太郎著の本でした。

この物語も「夜市」と同様に、現実から少しだけ外れた不思議な世界が、静かにノスタルジックに描かれています。

物語は、同じ日が延々と繰り返されるという内容になっていますが、淡々と語られる文章を読んでいると、不思議とこういうことってあるかもしれないなって思えてくるから不思議です。

朝ふと目が覚めると、自分以外の全てが昨日と全く同じ内容を繰り返している。
例えば銀行からお金を引き出して大きな買い物をしたとしても、朝がくると買い物した物は手元からなくなりお金も銀行に戻っている。
極端に言うと、今日無茶をして命を落としたとしても、朝がくるとまた同じ一日が始まる。

こう書くとやはり現実としてはありえないよなって思えなくもないですが、同じ日が繰り返されているのは主人公だけでなく周りには何名もいるということ、繰り返される一日が始まるタイミングは人それぞれで違うということ、同じ日が繰り返されなくなるということが起こりえるのか、また同じ日が繰り返されなくなった場合、それは次の一日が始まるということなのかということ等々、同じ日が繰り返されるという物語の設定を描く際に、本来であればぼかしておきたいであろう内容をあえて淡々と描くことで、物語にリアルよりもより深みのあるリアリティをもたらしていて、読み進めていくうちにこの不思議な世界に静かに浸ることができます。

この本も読み終えた後に不思議な清涼感を感じることができました。
「夜市」ほどの強い印象は受けませんでしたが、とても面白い本でした。