愚行録
愚行録


Tairaオススメ度:★★★★

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一家を惨殺した≪怪物≫はどこに潜んでいたのか?
さまざまな証言を通して浮かび上がる家族の肖像、そして人間たちの愚行のカタログ。
痛切にして哀切な、『慟哭』『プリズム』を凌駕する著者の真骨頂的作品、ついに登場!
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読み終えた後、自然と出るため息。

人間の愚かさ儚さ切なさ。
読み終えて考えさせられたのはこれら全てです。

この小説は、物語が時間軸に沿って展開していくという一般的な手法は取っていなくて、一人の人が複数の人にそれぞれインタビューしていくという形で話が進行します。

複数の人から語られる殺された夫婦(家族)の人物像がしだいに浮き彫りになっていきます。
そして、なぜこの家族は殺されなければならなかったのかという物語の確信に少しずつ近づいていきます。

この言わば変化球的な物語の進め方は意外と強く引き込まれます。
インタビューを受けている相手は、事件現場の近所のおばさんであったり、殺された夫婦の同級生であったり、会社の同僚であったり、といろいろ登場しますが、相手によっては自分のことばかりを話しがちであったり、特に重要でないようなことを世間話のように長々と話したり、読んでいてあたかも僕自身がインタビュアーであるかのようなもどかしさを感じたりもしました。
この感覚はとても新鮮で、こういうミステリー小説の手法もあるんだなと興味深くとても楽しめました。

物語内容の感想については、終盤、話の展開が少し飛躍しすぎるような気がしました。
中盤までは、夫婦の表面的には完璧な人間像の化けの皮を剥がすかのように、じわりじわりと傲慢な本性をあぶり出していく形で物語が進められ、この本のタイトルでもある人間としての愚行もしくは狡猾さを少しずつ具体的な形で露呈していくというスリリングな展開で話が進められますが、終盤に入ると、傲慢な本性を持っているからといって殺されて良い訳ではないと真っ当な考えが作者によぎったのかどうかは分かりませんが、凄く中途半端なところで夫婦の本性を追求するインタビューが終了し、結果として夫婦の人間像をどう提示したかったのかが分かりにくく今一つ想像力を欠いてしまいました。

と偉そうなことを書いたところで今回は星4つとさせていただきました。