Tairaおすすめ度:★★★★★

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【山本周五郎賞(第9回)】
東京の静かな住宅街で起こる陰惨な一家連続殺人。
現場には裸に剥かれノコギリで体中を抉られた両親、喉を掻き切った少年の姿があった。
刑事と第一発見者の美術教師の人生をも巻き込んで、事件は意外な展開を見せる…。
〔1995年刊の新装版〕
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冒頭からあまりの衝撃的な暴力描写で、果たしてこの本を最後まで読むことができるのだろうかと一瞬頭がくらくらしましたが、その凄惨な暴力がなぜ起きてしまったのか、なぜ起きなければならなかったのか、その答えを知ることが僕に課せられた試練であり目を逸らすのではなく正面から受けるべき課題であると大げさに考え、読み進めることにしました。

物語は、親と子供、そしてそれらを包括する家族がテーマとして描かれています。

子供を持つ親は果たして親としての資格を持っているのだろうか。
年をとることで周囲から自然と大人としての扱いを受けますが、周囲から大人と呼ばれることと親になることは必ずしも等しいものではないのかも知れないと、この本を読み今更ながら考えさせられました。

子供を不遇の事故で亡くした主人公である刑事と、その事件をきっかけに心に病を抱えてしまった妻、そしてその事故を父親の責任として未だ父親を許さない娘という家族。
親の過剰な期待に応えられない自分を責める女子高生。
子供が求める親に認められたいという感情を受け止めない親。
等々、多くの家族の形が描かれつつも、少しずつねじれゆがみながら破滅的な結末へ向かう物語に何度も何度も心が締め付けられました。

しかしここに描かれている問題は必ずしも物語の中だけのものではなく、いつでも現実に起こりえるものであるとも思います。

時には暖かく時には残酷な家族という形、これら全てを受け入れるだけの包容力を持ちたいと、強く思いました。
本当に読んで良かった思います。