倒錯の帰結


この本を本日読み終えましたで感想を一つ。
セルゲイブースカさんから、この本を読み終えたら”解り易く解説して下さい”との声がありましたので、少しネタバレになってしまいますが僕なりの感想を書いてみたいと思います。

とりあえず最初に言います、この小説は僕的にはとても面白かったです。

まずこの本は、”本書は「首吊り島」「監禁者」「袋とじ(倒錯の帰結)」の3つの部分で構成されています。「首吊り島」と「監禁者」のどちらから先に読んでもかまいませんが、「袋とじ」は最後にお開けください。「監禁者」は、本をひっくり返すと、巻末の解説の手前から始まります。”という変わった構成で物語が進行していきます。

僕は「首吊り島」、「監禁者」、「倒錯の帰結」の順で物語を読み進めました。

この二つの物語は、同一の主人公(小説家)によって、「首吊り島」の方は密室殺人がテーマに、「監禁者」の方は監禁されている状況をいかに打破するかということがテーマに描かれています。

そして、この二つの物語を複雑に絡めて合わせているのが、主人公がそれぞれの物語で執筆している「ミステリー小説」となっています。

ミステリー小説の中でミステリー小説を執筆する主人公。これがこの小説の核であり全てであると言ってもよいと僕的には思います。

「首吊り島」の中で「監禁者」を執筆する主人公。「監禁者」の中で「首吊り島」を執筆する主人公。
いつの間にかどちらが現実でどちらが空想なのかということが複雑に交差していきます。
結局はどちらも現実でどちらも空想です。
物語の時間軸も、二つの物語を行ったり来たりします。どちらが先の話なのか?どちらも先であり後でもあります。
要は”メビウスの輪”です。
「首吊り島」と「監禁者」は表と裏であり裏と表であり、またそれは同時に進行している。そんな感じでしょうか。

そして物語をさらに複雑にしているのが、第三部の「倒錯の帰結」です。

一般的なミステリー小説だと最後の章で全てのトリックを示します。どんなに複雑に入り組んでいる謎もババン!です。

だけどこの小説にそういうことを期待すると痛い目にあいます。

すでに二つの物語の現実と空想が、また時間軸が複雑に絡み合っているところに、この最後の章が追い打ちをかけます。

二つの物語がより複雑に絡み合います。
もう充分だろうと思った矢先、最後の最後でもさらに謎を提示します。もうお腹いっぱいです。

結論です。この小説にオチはありません。
オチが無いというと語弊があるかもしれませんが、とりあえず謎解きの回答は示されていません。
それは、僕の理解力が低いからなのかもしれませんが、僕的にはそう思いました。

結局、セルゲイブースカさんが期待していた解説は出来ていませんね。僕もこの程度です。:-)

最後にもう一度。いろいろ自分勝手な事を書いてみましたが、この小説は僕的にはとても面白かったです。
ミステリー小説は面白いな。ってつくづく思った夜でした。