煙か土か食い物

本を読み、ここまでの疾走感を感じたのは初めてでした。
それくらい、ものすごいスピード感溢れる文章ですよ。この本は。

このスピード感を言葉で表現することは難しいのですが、文章がバツンバツンと切れる感じというか、例えば、「半分くらい回ったところで面倒くさくなって俺は蓋の隙間に手を突っ込んで力任せにそれを持ち上げる。バカッ!棺桶の一部がかけてしまったがそんなもの構うものか。」とか「砂利道を下ると荒れた冬の畑に出る。雪がない。土が黒く固い。人はいない。何もない。グッド。」というように、文章が心地良く流れていたかと思うと、突然、バツンと切れる感じ。これがなかなか心地良いのです。

内容は、主人公の母親が連続主婦殴打生き埋め事件の被害者となったところから話が始まり、その犯人を見つけるっていう、どちらかと言えば分かりやすいストーリーなのですが、そこに主人公の複雑な家庭の事情が絶妙にブレンドされ物語に深みを加えています。

その家族の話にしても、内容は結構暗く考えさせられる話なのですが、この本に一貫したスピード感と軽妙な言葉選びがそれらの暗さを中和し、重すぎず軽すぎない内容として受け止めることができます。

「煙か土か食い物」というタイトルも、一癖ありそうな雰囲気が素敵。